【中小企業ベンチャー式人材育成】 中小企業は、すべてベンチャーだ
「中小企業は、すべてベンチャーです。」
私がこう言うと、多くの社長が首をかしげます。
「うちは創業50年の町工場だよ」
「IT企業でもないし、ベンチャーなんて縁がない」
しかし、私は本気でそう考えています。
そして、この考え方こそが、いま多くの中小企業が抱えている「後継者がいない」という問題を解くカギになると確信しています。
こんにちは。つながるネット株式会社の森 修です。
今回から毎週木曜日に、全25回の連載「中小企業ベンチャー式人材育成」をお届けします。
この連載は、中小企業の社長に向けて書いています。
最初に、この連載でいちばんお伝えしたいことを書いておきます。
・社長は変わらなくていい。
・専門秘書から始めて、官房長官に育てる。
この言葉の意味は、これから半年かけてじっくりお話ししていきます。

どの会社にも「始まりの日」がある
「ベンチャー企業」と聞いて、どんな会社を思い浮かべるでしょうか。
近年のIT企業、若い起業家、急成長するスタートアップ。
そんなイメージを持つ方が多いと思います。
しかし、どの会社にも始まりの日があります。
創業者が「こんな商品をお客様に届けたい」「この技術で地域の役に立ちたい」「自分の店を持ちたい」という思いを持ち、それを形にするために会社を立ち上げた日です。
思いを形にするために、リスクを取って一歩を踏み出す。
これがベンチャーの本質です。会社の規模や業種、創業からの年数は関係ありません。
私は公共のビジネスサポートセンターのセンター長として、年間1,200件を超える事業相談をお受けしてきました。
その中で、数多くの創業の瞬間に立ち会いました。
飲食店、アパレル、農園、製造業。業種はさまざまでしたが、どの創業者も同じ目をしていました。
「これを形にしたい」という、強い思いを持った目です。
創業から何十年たった会社でも、その始まりには必ずこの思いがあります。
だから、「中小企業は、すべてベンチャーなのです。」
会社が大きくなると、何が起きるのか
会社は成長するにつれて、姿を変えていきます。
社員が増える。事業が増える。売上が大きくなる。
そうなると、仕事を分担するために組織ができ、ルールができ、仕組みができていきます。
そして会社は、少しずつ「安定した事業」へと方向転換していきます。
これは悪いことではありません。成長の証です。
ただ、ここに一つの落とし穴があります。
「会社は安定しても、社長の本質はベンチャーのままだということです。
社長は今も、創業の思いを胸に、新しい挑戦を続けています。
誰よりも先に海に飛び込む「ファーストペンギン」です。
一方で、社員は「安定した会社」で働いているつもりでいます。
自分の居場所を居心地よくしたい。自分の職務を守り、成果を出して、給与を上げたい。
同じ会社にいながら、社長はベンチャーを、社員は安定した会社を見ている。
社長と社員の間に溝が生まれるのは、当たり前のことなのです。
社員を責めても、何も変わらない
「うちの社員は言われたことしかやらない」
「もっと経営者目線で考えてほしい」
多くの社長から、こうしたお悩みを伺ってきました。
しかし、私は社員を責める気にはなれません。
社員が経営のことを考えないのは、やる気がないからではありません。
経験がないからです。
そして人は、「自分が理解できる範囲でしか動けない」からです。
社長と同じ景色を見たことがない社員に、社長と同じ判断を求めるのは無理があります。
それは仕方のないことなのです。
2社に1社は「後継者がいない」
ここで、一つの数字をご紹介します。
帝国データバンクの調査(全国「後継者不在率」動向調査・2025年)によると、全国約27万社のうち、後継者が「いない」または「未定」の企業は50.1%。およそ13.8万社にのぼります。
四国に限ると、その割合は55.1%と、全国よりも高くなっています。

2社に1社は、次の社長が決まっていない。
これが、いまの日本の中小企業の現実です。
一方で、同じ調査には明るい変化も表れています。
これまで事業承継といえば、子どもや親族に継がせる「同族承継」が中心でした。それがいま、社内の人材を後継者に育てる「内部昇格」が増えてきているのです。
つまり、社員の中から後継者を育てることは、もはや特別なことではなくなりつつあります。
では、なぜ多くの会社で後継者が決まらないのでしょうか。
私はこの問題の根っこも、先ほどお話しした「社長と社員の溝」にあると考えています。
後継者がいないのではありません。社長の隣に立つ人を、育ててこなかっただけです。
社長が一人で先頭に立ち、社員はその後ろで自分の職務を守る。
この形のまま何十年も走ってきたから、社長の考えを理解し、社長の代わりが務まる人が育っていないのです。
でも、今からでも間に合います。
それがこの連載のテーマです。
社長は変わらなくていい
ここで、冒頭の言葉に戻ります。
・社長は変わらなくていい。
・専門秘書から始めて、官房長官に育てる。
世の中の経営書や研修の多くは、「社長が変わりなさい」と言います。
「もっと任せなさい」「分かりやすく説明しなさい」「社員とのコミュニケーションを増やしなさい」。
私は、そうは言いません。
中小企業の社長は、営業マンであり、財務責任者であり、何でもこなすスーパーマンです。
そのやり方で会社をここまで育ててきたのですから、変える必要はありません。
変えるのは、社長ではなく「社員の立ち位置」です。
この連載では、次の3つの段階で、社長の右腕となり、やがて後継者となる人を育てる方法をお伝えします。
① 専門秘書(兼任)
営業職などの本業を持ちながら、時には社長の秘書を務める人。
お茶出しや雑用係ではなく、社長の仕事を職務の枠なく引き受ける「なんでもありのスタッフ」です。
まずは社長の考えを理解することから始めます。
② 官房長官(COO)
社長の相談相手であり、右腕であり、良き理解者。
社長の身の回りを調整し、時には社長の代弁者にもなる人です。
③ 後継者
社長の考えを誰よりも理解した官房長官が、やがて次のファーストペンギンになります。
私自身が「専門秘書」だった
少しだけ、私自身のことをお話しさせてください。
私はコンビニエンスストアの本部で、店長からスーパーバイザー、バイヤー、エリア統括、商品本部のマーチャンダイザーと、さまざまな立場を経験してきました。
その間、直属の上長がいながら、社長や副社長から直接、担当外の仕事を任されることが多くありました。
ある日、社長から直接こう言われました。
「資金として3億円集めて欲しい」
結果として、私は3ヶ月で3億円を超える資金を集めることができました。
私がどう動き、どうやって3億円を集めたのか。
そして、なぜ社長は直属の上長ではなく、私に直接頼んだのか。
その答えの中に、「専門秘書」とは何かが詰まっています。この話は、第5回で詳しくお伝えします。
今振り返ると、私はまさに「専門秘書」でした。
本業を持ちながら、時には社長の隣で、社長の仕事を引き受けていたのです。
そしてその経験が、私を育ててくれました。
「人は、ポジションが育てる。」これも、この連載でお伝えしたい大切なことの一つです。

この連載でお伝えすること
全25回を、6つのテーマに分けてお届けします。
【第1部】 社長は変わらなくていい
・なぜ社長が変わる必要がないのか
【第2部】 わが社の「専門秘書」は誰か
・誰を、どうやって専門秘書に選ぶのか
【第3部】 専門秘書は「社長の頭の中」を知ることから始まる
・社長が何も変えずに、社員が社長に近づく方法
【第4部】 専門秘書の5つの役割
・専門秘書が官房長官に育つまでの道のり
【第5部】 「やってみろ」で官房長官を見極める
・本当に任せられる人の見極め方
【第6部】 理想のセカンドペンギンから後継者へ
・社長の期待を150%で超える人の育て方 |
どの回も、私が現場で経験してきたことをもとに、社長が明日から実践できる形でお伝えします。
社長への問い
最後に、社長に一つだけ問いかけをさせてください。
あなたが会社を立ち上げたときの「思い」を、社員の誰が知っていますか?
すぐに顔が浮かんだ方。その人が、御社の後継者候補かもしれません。
顔が浮かばなかった方。心配はいりません。この連載は、そんな社長のために書いています。
次回予告
次回は、多くの経営書や研修が口をそろえて言う「社長が変わりなさい」という言葉に、私が反対する理由をお話しします。
「任せなさい」「説明しなさい」と言われて、試してみたけれど、結局うまくいかなかった。
そんな経験のある社長は、少なくないはずです。
うまくいかなかったのは、社長のせいではありません。
実は、そこにはスーパーマン社長だからこそ陥る、ある落とし穴があるのです。
第2回「社長は自分のやり方を変えなくていい」
来週月曜日の更新を、ぜひお楽しみに。
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つながるネット株式会社 代表取締役 森 修
中小企業の売上アップ・事業改善・後継者育成のご相談を承っています。
※出典:株式会社帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」「四国地区・『後継者不在率』動向調査(2025年)」





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