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【中小企業ベンチャー式人材育成 第2回】社長は自分のやり方を変えなくていい

6 日前
読了時間: 6分

「社長、もっと社員に任せてください。」


経営セミナーや研修で、こう言われたことはありませんか。


「分かりやすく説明しましょう」

「社員とのコミュニケーションを増やしましょう」

「社長が変われば、会社が変わります」


その言葉に背中を押されて、翌日から実際にやってみた社長もいらっしゃると思います。

朝礼で方針を丁寧に説明した。面談の時間をつくった。思い切って仕事を任せてみた。


そして、3ヶ月後。


気がつけば、社長はまた自分で営業に走り、自分で数字を見て、自分で判断していた。

「やっぱり、自分でやった方が早い」とつぶやきながら。


こんにちは。つながるネット株式会社の森 修です。


今回は、多くの経営書や研修が口をそろえて言う「社長が変わりなさい」という言葉に、私が反対する理由をお話しします。

ただし、間違いとも私は言いませんし、否定する者ではありません。

あくまで、私の経験などからの考えです。


前回のおさらい

前回は、「中小企業は、すべてベンチャーだ」というお話をしました。


どの会社にも、創業者が思いを形にするために一歩を踏み出した「始まりの日」がある

会社が大きくなって安定しても、社長の本質はベンチャーのまま

社長はベンチャーを、社員は安定した会社を見ている。だから溝が生まれるのは当たり前

後継者がいないのではない。社長の隣に立つ人を、育ててこなかっただけ

そして、この連載のメッセージをお伝えしました。


社長は変わらなくていい。

専門秘書から始めて、官房長官に育てる。


今回は、その前半「社長は変わらなくていい」を掘り下げます。



中小企業の社長は、スーパーマンである

まず、中小企業の社長の一日を思い浮かべてみてください。


朝は現場で段取りを確認し、昼はお客様のところへ営業に出る。

夕方は銀行と資金繰りの話をして、夜は見積書を作り、採用の面接日程を調整する。


営業マンであり、財務責任者であり、現場監督であり、人事部長でもある。


中小企業の社長は、会社の仕事のほとんどを一人でこなすスーパーマンです。

そして、そのやり方で会社をここまで育ててきました。


ここが大切なところです。

社長のやり方は、欠点ではありません。会社をここまで連れてきた、最大の強みなのです。



「社長が変わる」と、何が起きるのか

では、スーパーマン社長が「変わりなさい」という教えに従うと、何が起きるのでしょうか。


① 説明に時間がかかる

社員に分かりやすく噛み砕いて説明しようとすると、社長の時間がどんどん奪われます。

しかも社員は、社長ほどの経験も情報も持っていません。どれだけ丁寧に説明しても、社長と同じ景色は見えないのです。


② 任せた仕事が思うように進まない

経験のない社員に、準備もないまま仕事を渡しても、うまくいくはずがありません。

結局、社長が途中で引き取ることになります。


③ 社長のエンジンが止まる

説明や手直しに追われている間、社長本来の仕事である営業も、資金繰りも、新しい挑戦も止まってしまいます。

会社で一番大きなエンジンが止まるのですから、業績に響かないはずがありません。


そして最後に、社長はこう結論づけます。


「やっぱり、自分でやった方が早い」



スーパーマン社長が陥る「落とし穴」

ここに、スーパーマン社長だからこそ陥る落とし穴があります。


それは、社長が、社員のところまで降りていこうとすることです。


「社長が変わりなさい」という教えは、突き詰めると「社長が社員に合わせなさい」という意味にもなります。

説明を薄め、判断を遅らせ、社員のペースに合わせる。


しかし、社長が降りていけば、会社を引っ張る力は弱まります。

そして一度うまくいかなかった経験は、「やっぱり社員には任せられない」という確信に変わってしまいます。


社長が変わろうとして失敗するたびに、社長と社員の溝は、かえって深くなっていくのです。


うまくいかなかったのは、社長の努力が足りなかったからではありません。

そもそも、変える場所が違っていたのです。



うどん屋の大将は、味を変えない

私はマーケティングのセミナーで、よく香川のうどん屋さんのお話をします。


香川にはうどん屋が数えきれないほどあります。それでも多くのお店が共存できているのは、それぞれに「看板メニュー」があるからです。

「麺のコシならあの店」「出汁ならこの店」と、お客様は目当てのお店を指名して食べに行きます。


もしその大将が、「若いお客さんに合わせなさい」と言われて味を変えたらどうなるでしょうか。

きっと、長年のお客様が離れていきます。


社長のやり方は、会社の看板メニューと同じです。


私は事業者の支援をするとき、弱みを直すことから始めません。まず、その会社の強みを見つけることから始めます。

強みを削って弱みを埋めるより、強みを活かす方が、会社は早く、大きく伸びるからです。


人材育成も同じです。

社長の強みであるスピード、判断力、現場感覚を削ってまで、社員に合わせる必要はありません。



では、何を変えるのか

社長が変わらないのなら、何を変えればいいのでしょうか。


答えは、社員の立ち位置です。


社長が降りていくのではありません。

社員の中から一人を選び、社長の隣まで登ってきてもらうのです。


社長の隣にいれば、社長が何を見て、何に悩み、どう判断しているかが、毎日目の前で見えます。

説明されなくても、見ているうちに分かるようになっていきます。


この「社長の隣に立つ人」を、私は専門秘書と呼んでいます。

専門秘書とは何者なのか。誰を選べばいいのか。第2部で詳しくお伝えします。



ただし、正直に申し上げます

ここまで「社長は変わらなくていい」とお伝えしてきました。


ただ、正直に申し上げると、社長にたった一つだけ、新しく挑戦していただきたいことがあります。


全部を変える必要はありません。やり方も、考え方も、そのままで構いません。

たった一つです。


それが何かは、後で説明します。

専門秘書が育ち、官房長官の姿が見えてきたとき、はじめて意味を持つことだからです。

連載の山場で、私自身が実際に経験した話とともにお伝えします。



社長への問い

最後に、社長に問いかけをさせてください。


研修や本で「社長が変わりなさい」と言われて、試してみてやめたことは、いくつありますか?


もし心当たりがあるなら、それは社長の失敗ではありません。

社長の会社には合わなかっただけです。もう、ご自身を責める必要はありません。



次回予告

社長は変わらなくていい。変えるのは、社員の立ち位置。

では、その社員は今、何を考えているのでしょうか。


「言われたことしかやらない」

「自分の仕事の範囲から一歩も出ようとしない」

「経営のことなんて、まったく考えていない」


多くの社長がこう嘆きます。

でも、社員は怠けているわけではありません。社員には社員の、ちゃんとした「理由」があるのです。


その理由が分かると、社長が社員にかけるべき言葉がまったく変わります。


第3回「社員が『事なかれ主義』なのは当たり前だ」

来週月曜日の更新を、ぜひお楽しみに。


つながるネット株式会社 代表取締役 森 修

中小企業の売上アップ・事業改善・後継者育成のご相談を承っています。

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