【中小企業ベンチャー式人材育成 第6回】
ここで言う秘書は「なんでもありのスタッフ」だ !
お茶出しでも雑用係でもない

「秘書なんて、うちには必要ない」
この連載で「専門秘書」という言葉を使い始めてから、何人かの社長にこう言われました。
「スケジュールは自分で管理できる」
「電話番なら事務員がいる」
「お茶出しのために人を置く余裕はない」
おっしゃる通りです。
そういう秘書なら、中小企業には必要ありません。
でも、私の言う「秘書」は、まったく違う人のことなのです。
こんにちは。つながるネット株式会社の森 修です。
今回は、この連載の主役である「専門秘書」とは、いったいどんな人なのかをお話しします。
前回のおさらい
前回は、「社長が『◯億円集めてくれ』と頼めるのは誰か」というお話をしました。
・社長が大きな仕事を頼むのは、役職でも勤続年数でもない
・社長の頭の中を知っていて、頼めば必ず結果を持ってくると信じられる人
・専門秘書はスーパーマンではない。違いは、社長の課題を自分の課題として受け止めること
では、その専門秘書は、ふだんどんな仕事をしているのでしょうか。
一般的な「秘書」のイメージ
「秘書」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、こんな姿だと思います。
・社長のスケジュールを管理する
・電話を取り次ぐ
・来客にお茶を出す
・書類を整理する
どれも大切な仕事です。
ただ、これらはすべて、社長の「身の回り」を整える仕事です。
この仕事をいくら続けても、社長と同じ景色は見えてきません。
社長が何を考え、何に悩み、どう判断しているのか。そこには触れないからです。
なんでもありのスッタフ
私の言う秘書は、「なんでもありのスタッフ」です。
ただし、誤解しないでください。
雑用を何でも引き受ける人、という意味ではありません。
社長の仕事を、職務の枠にとらわれずに引き受ける人。
そもそも、社長も「なんでもあり」なのですから。
これが、私の言う「なんでもあり」です。
社長の仕事には、境界がありません。
営業も、お金のことも、人のことも、取引先との関係も、新しい事業のことも、すべて社長の仕事です。
その社長の仕事に、職務の枠を越えて関わる。
だから、社長と同じ景色が見えるようになるのです。
「雑用」と「なんでもあり」の違い
では、雑用と「なんでもあり」は、どこが違うのでしょうか。
一言でいえば、目的が違います。
雑用係 | なんでもありのスタッフ | |
目的 | 言われた作業を片付けること | 社長の課題を解決すること |
見ているもの | 目の前の作業 | 社長が何をしたいのか |
仕事の範囲 | 頼まれたことだけ | 目的の為なら、職務の枠を越えて |
同じ「資料をつくる」という仕事でも、まったく違ってきます。
雑用係は、言われたとおりに書式を整えます。
なんでもありのスタッフは、社長がこの資料で何を伝えたいのかを考えてつくります。
作業は同じでも、見ている先が違うのです。

私自身も「なんでもあり」だった
コンビニ本部で働いていた頃の私も、まさにこの「なんでもありのスタッフ」でした。
本業は、加工食品を担当する商品本部のマーチャンダイザーです。
ところが、その本業とは別に、社長や副社長から担当外の仕事を次々に任されました。
たとえば、副社長の直轄で進められた社内の業務改革プロジェクトにも加わりました。
商品の担当者でありながら、会社全体の発注の仕組みをどう変えるかという、まったく別の仕事に関わったのです。
正直に言えば、大変でした。
本業だけでも忙しいのに、担当外の仕事が次々にやってくるのですから。
でも、今振り返ると、この「なんでもあり」の経験こそが、私を育ててくれました。
担当外の仕事に関わるたびに、会社全体を見る目が少しずつ養われていったのです。
自分の担当だけを守っていたら、決して見えなかった景色でした。
「事なかれ主義」の反対側にいる人
第3回で、社員の本音は「居場所を居心地よくしたい」「自分の職務を守りたい」「給与を上げたい」の3つだとお話ししました。
「なんでもありのスタッフ」は、ちょうどその反対側にいる人です。
自分の職務を守るのではなく、職務の枠を越えて社長の仕事を引き受ける。
だからこそ、社長と同じ景色が見えるようになり、やがて社長の右腕へと育っていきます。
ただし、ここで一つ注意があります。
「なんでもあり」といっても、勝手に何でも決めていい、という意味ではありません。
最終的に判断するのは、あくまで社長です。
専門秘書は、社長の考えを理解し、社長の判断を形にする人です。
この「社長と専門秘書の役割の分け方」については、連載の中で詳しくお伝えします。
社長は、どんな仕事を渡せばいいのか
では、社長は専門秘書に、どんな仕事を渡せばいいのでしょうか。
目安は、これです。
「社長でなくてもできる。でも、社長の考えが分かっていないとできない仕事」
特に中小企業に多いのですが、
たとえば、こんな仕事です。
・営業関係
・社内の段取りや、部署をまたぐ連絡
・会議(ミーティング)の準備と、決まったことの整理
・新しい企画や取引先候補の下調べ
どれも、社長が自分でやっていることが多い仕事ではないでしょうか。
そして、どれも社長の考えが分かっている人でなければ、うまくできない仕事です。
こうした仕事を専門秘書に渡すことで、社長は自分にしかできない仕事に集中できます。
そして専門秘書は、仕事を通じて社長の考えを少しずつ身につけていきます。
社長は、やり方を変える必要はありません。
今、自分でやっている仕事の一部を、専門秘書に「手伝ってもらう」だけです。

社長への問い
最後に、社長に問いかけをさせてください。
社長の仕事のうち、「社長の考えが分かっている人なら任せられる仕事」は、いくつありますか?
ぜひ一度、紙に書き出してみてください。
思っている以上に、たくさんあることに気づくはずです。
そのリストが、専門秘書に渡す最初の仕事になります。
次回予告
ここまで読んで、こう思った社長もいらっしゃるかもしれません。
「専門秘書の意味は分かった。でも、そんな人を一人置く余裕は、うちにはない」
ご安心ください。
専門秘書を、新しく雇う必要はありません。専任にする必要もありません。
むしろ、兼任のほうがいい理由があるのです。
そしてその理由は、第3回でお話しした「社員の本音」と深く関わっています。
第7回「専門秘書は兼任でいい ― 営業職が『時には秘書』になる」
来週月曜日の更新を、ぜひお楽しみに。
つながるネット株式会社 代表取締役 森 修
中小企業の売上アップ・事業改善・後継者育成のご相談を承っています。



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