【中小企業ベンチャー式人材育成 第4回】
後継者がいないのではない、「官房長官」を育ててこなかっただけだ
なぜ、官房長官は総理大臣になれるのでしょうか。
小渕恵三さん、福田康夫さん、安倍晋三さん、菅義偉さん。
いずれも、内閣官房長官を務めたあとに、総理大臣になった方々です。
もちろん、政治の世界にはさまざまな事情があります。
それでも、「官房長官」という立ち位置から、次のリーダーが何人も生まれていることは事実です。
こんにちは。つながるネット株式会社の森 修です。
前回の予告でお約束したとおり、今回はこの問いから始めます。
そしてその答えの中に、中小企業の後継者不足を解くカギがあります。

前回のおさらい
前回は、「社員が『事なかれ主義』なのは当たり前だ」というお話をしました。
社員の本音は
「居場所を居心地よくしたい」
「職務を守りたい」
「給与を上げたい」
の3つです。
勿論
「自分の能力をスキルアップしたい」
「出世したい」
「自分の能力で世の中の役に立ちたい」
と考えてい方もおられます。
しかし、人の根幹は「楽したい」「面倒は避けたい」と考えるように脳ができています。
そんな中、自分の能力をスキルアップさせたいと考えて行動する従業員は希少な存在です。
ここで話は戻り、社員は経営を考えて行動しないのか?
それは
社員が経営を考えないのは、経験がなく、理解できる範囲でしか動けないから
景色は言葉で説明しても伝わらない。社長の隣に立つことで、見えるようになる
今回は、この「社長の隣に立つ人」が、なぜ後継者につながるのかをお話しします。
官房長官は、何をしている人か
官房長官の仕事を、ごく簡単にまとめると、次の4つになります。
① 総理の相談相手
総理の一番近くで、日々の判断について相談を受けます。
② 調整役
各省庁や与党など、さまざまな立場の間に入り、物事が前に進むよう調整します。
③ 代弁者
毎日の記者会見で、政府の考えを国民に伝えます。いわば「政府の顔」です。
④ 何でも引き受ける人
担当する分野が決まっている大臣と違い、官房長官は、政府全体に関わるあらゆる仕事に関わります。
どうでしょうか。
総理の隣で、総理と同じ景色を毎日見ている人。それが官房長官です。
だからこそ、総理の考え方、判断のしかた、責任の重さを、誰よりも深く知っています。
次のリーダーが官房長官から生まれるのは、偶然ではないのです。
昔の商家には「番頭さん」がいた
この仕組みは、実は日本の商売の世界にも昔からありました。
江戸時代から続く商家には、番頭さんがいました。
番頭さんは、主人の右腕として店を切り盛りし、奉公人をまとめ、取引先との間に立ちました。
主人の考えを誰よりも理解し、ときには主人に代わって店を支える存在です。
主人と奉公人の間に、番頭さんという「橋」がかかっていたのです。
ところが、いまの中小企業を見渡すとどうでしょうか。
社長が一人で先頭に立ち、その後ろで社員がそれぞれの職務を守っている。
社長と社員の間に、橋がない。
そんな会社が、とても多いように感じます。

2社に1社は、後継者が決まっていない
第1回でもご紹介しましたが、帝国データバンクの2025年の調査では、後継者が「いない」または「未定」の企業は50.1%。四国では55.1%にのぼります。
一方で、同じ調査では、社内の人材を後継者に育てる「内部昇格」が増えていることも分かっています。
社員の中から次の社長を育てることは、もはや特別なことではありません。
それなのに、なぜ多くの会社で後継者が決まらないのでしょうか。
私は、こう考えています。
後継者がいないのではありません。「官房長官」を育ててこなかっただけです。

いきなり後継者は選べない
多くの社長は、後継者問題を「誰を次の社長にするか」という選ぶ問題だと考えています。
でも、考えてみてください。
社長の隣に立ったことが一度もない社員の中から、次の社長を選ぼうとしても、選べるはずがありません。
どの社員も、社長と同じ景色を見たことがないのです。
社長の判断のしかたも、責任の重さも知らない。
それでは、誰を選んでも不安が残ります。
そして「まだ任せられない」と、決断が先送りになっていきます。
後継者は「選ぶ」ものではなく、「育てる」ものです。
そして育てるためには、順番があります。
後継者への3つの段階
この連載では、社長の右腕となり、やがて後継者となる人を、次の3つの段階で育てる方法をお伝えしていきます。
① 専門秘書(兼任)
営業職などの本業を持ちながら、時には社長の秘書を務める人。
社長の隣に立ち、社長の考えを理解することから始めます。
② 官房長官(COO)
社長の相談相手であり、右腕であり、良き理解者。
社内外の調整役であり、時には社長の代弁者にもなる人です。
③ 後継者
社長の考えを誰よりも理解した官房長官が、やがて次のファーストペンギンになります。
いきなり③を探すのではなく、①から始める。
官房長官が育てば、後継者候補は自然と目の前に現れます。

私自身が、社長の隣に立っていた
少しだけ、私自身の話をさせてください。
前回、コンビニ本部時代の話を書きました。
必死に食らいついていくうちに、私は社長や副社長から直接指示を受けるようになり、やがて会社全体の戦略について相談を受けるまでになりました。
今振り返ると、当時の私は、社長と副社長の官房長官のような役割を担っていたのだと思います。
ある日のことです。
直属の上長を飛び越えて、社長から私に直接、こんな指示がありました。
「資金として◯億円集めて欲しい」
私は必死に対応し、2ヶ月で、社長の指示どおりの結果を出すことができました。
では、なぜ社長は直属の上長ではなく、私に直接頼んだのか。
その答えの中に、「専門秘書」とは何かが詰まっています。この話は、第5回で詳しくお伝えします。
第1部のまとめ
第1回から第4回までの第1部でお伝えしてきたことを、まとめておきます。
中小企業は、すべてベンチャーである、どの会社にも、創業の思いがある。
社長は、自分のやり方を変えなくていい、変えるのは、社員の立ち位置。
社員が「事なかれ主義」なのは当たり前、景色は説明ではなく、隣に立つことで見えてくる。
後継者がいないのではない「官房長官」を育ててこなかっただけ。
次回からは第2部に入ります。
いよいよ、「では、誰を、どうやって社長の隣に立たせるのか」という具体的な話に進みます。
社長への問い
最後に、社長に問いかけをさせてください。
あなたの会社の「官房長官」は、誰ですか?
すぐに顔が浮かぶ方。その方は、きっと社長にとってかけがえのない存在です。
顔が浮かばない方。心配はいりません。官房長官は、今日から育て始めることができます。
次回予告
社長が大きな仕事を頼むとき、真っ先に顔が浮かぶ社員は誰でしょうか。
役職が一番上の人でしょうか。一番長く勤めている人でしょうか。
実は、そのどちらでもないことが多いのです。
あの日、社長が「◯億円集めて欲しい」と頼んだのは、上長ではなく私でした。
今思えば、社長の期待に応えるために必死でした。
そして2ヶ月で、社長の指示どおりの結果を出すことができました。
大切なのは、どうやって集めたかではありません。
なぜ社長は、上長ではなく私に頼んだのか。
この話は、次回からの第2部で詳しくお伝えします。
つながるネット株式会社 代表取締役 森 修
中小企業の売上アップ・事業改善・後継者育成のご相談を承っています。
※出典:株式会社帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」「四国地区・『後継者不在率』動向調査(2025年)」



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