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【中小企業ベンチャー式人材育成 第3回】社員が「事なかれ主義」なのは当たり前

10月5日
読了時間: 6分

「うちの社員は、言われたことしかやらない」


これまで数えきれないほどの社長から、この言葉を聞いてきました。


「自分の仕事の範囲から一歩も出ようとしない」

「会社の将来のことなんて、まったく考えていない」

「もっと経営者目線で考えてほしいのに」


お気持ちは、よく分かります。

でも、あえて申し上げます。


社員は「経営者では無い」ので、当たり前なのです。


こんにちは。つながるネット株式会社の森 修です。

今回は、社長がつい嘆いてしまう社員が「経営者では無い」について、社員の側から見た景色をお話しします。


前回のおさらい

前回は、「社長は自分のやり方を変えなくていい」というお話をしました。


中小企業の社長は、営業も財務も現場もこなすスーパーマン。そのやり方は会社の最大の強み

「社長が変わりなさい」に従って社員のところまで降りていくと、社長のエンジンが止まる

変えるのは社長ではなく、社員の立ち位置

では、その社員はいま、何を考えているのでしょうか。



社員の本音は、この3つ

言葉を選ばずに言えば、多くの社員が考えていることは、次の3つです。


① 自分の居場所を、居心地のよいものにしたい

  人間関係に波風を立てず、毎日を気持ちよく過ごしたい。


② 自分の職務を守りたい

  任された仕事をきちんとこなし、自分の持ち場で評価されたい。


③ 言われた仕事を正しくこなして、給与を上げたい

  頑張った分だけ、生活を豊かにしたい。


どうでしょうか。

社長から見ると「事なかれ主義」に映るかもしれません。


でも、社員の立場に立ってみると、どれもごく自然な願いです。

むしろ、自分の持ち場を守り、真面目に働いてくれている証拠とも言えます。


社員は怠けているのではありません。社員なりに、きちんと合理的に働いているのです。


なぜ社員は、経営のことを考えないのか

それでも社長は、「もう少し会社全体のことを考えてほしい」と思うはずです。

なぜ社員は、経営のことを考えないのでしょうか。


理由は、社員の性格ではありません。次の2つです。


理由① 経験がないから

社長は、毎日のように決断をしています。

お金を借りる決断、人を雇う決断、取引先を選ぶ決断。そして、その結果の責任をすべて背負っています。


社員は、この「決断して責任を負う」という経験をしたことがありません。

経験したことがないものを、頭の中だけで想像するのは、誰にとっても難しいことです。


理由② 人は、自分が理解できる範囲でしか動けないから

社長の頭の中には、資金繰りのこと、銀行との関係、取引先の動き、業界の先行き、来年の採用計画と、膨大な情報が詰まっています。


社員が見ているのは、そのほんの一部です。

見えていない景色について判断を求められても、動きようがありません。


人は、自分が理解できる範囲でしか動けない。

これは社員に限らず、誰にでも当てはまることです。


私に「景色」を見せてくれた人

偉そうなことを書いていますが、実は私自身にも、社長の景色がまったく見えていなかった時期があります。


コンビニ本部時代を振り返ると、強く印象に残っている人がいます。当時の副社長です。


副社長は、大手コンサルティング会社の出身でした。

ベンチャー精神にあふれ、「タイム・イズ・マネー」という感覚で、とにかくスピードと成果を求める人でした。


私に対する口癖は、「すぐやれ」「今すぐ実行しろ」。


正直に言えば、当時の私は、大きな会社の安定の中で、ぬるま湯に浸かっていたのだと思います。

その私を引き上げてくれたのが、この副社長でした。


必死に食らいついていくうちに、見える景色が変わっていきました。 (実は嫌で嫌で、ブラック企業に勤めているのかと思うほど、四六時中、副社長から指示された仕事を、実行・実行・検証・実行・実行と成果を求めました。)


これらの経験があり、副社長や社長が何を考え、何を大切にし、どんなスピードで判断しているのか。

それが、少しずつ分かるようになっていったのです。


やがて私は、社長や副社長から直接指示を受けるようになり、会社全体の戦略について相談を受けるまでになりました。

今振り返ると、私の仕事の基礎は、すべてこの時期に築かれています。


景色は、言葉で説明されて見えるものではありません。社長の近くに立ち、食らいついていくことで、見えるようになるものです。



「経営者目線で考えろ」が届かない理由

ここで、多くの社長が口にする言葉について考えてみます。


「もっと経営者目線で考えろ」


この言葉は、社員にはほとんど届きません。

なぜなら、見たことのない景色を、想像で見ろと言っているのと同じだからです。


地図を持っていない人に「ゴールを目指せ」と言っても、どちらに歩けばいいのか分かりません。

それどころか、「また社長が無理を言っている」と、かえって心を閉ざしてしまいます。


社長が悪いのではありません。社員が悪いのでもありません。

言葉で景色を伝えようとすること自体に、無理があるのです。



全員を変えようとしなくていい

もう一つ、大切なことをお伝えします。


社員全員に「経営者目線」を持たせる必要はありません。


会社には、自分の持ち場を守り、毎日の仕事を確実にこなしてくれる人が必要です。

事なかれ主義に見える社員たちこそが、会社の安定を支えているのです。


必要なのは、全員を変えることではありません。

社員の中からたった一人を選び、社長と同じ景色を見せることです。



社長がかけるべき言葉は、これだ

では、社長は社員にどんな言葉をかければいいのでしょうか。


「もっと経営者目線で考えろ」ではありません。


「私の隣で、この仕事を手伝ってくれないか」


この一言です。


この言葉は、社員の本音を一つも脅かしません。

今の居場所も、今の職務も、そのまま守られます。

それでいて、社長の隣に立つことで、社長と同じ景色を少しずつ見られるようになります。



景色を「説明」するのではなく、景色を「見せる」。

これが、事なかれ主義の社員を、社長の右腕へと育てる最初の一歩です。


この「社長の隣に立つ人」が、この連載でお伝えしている専門秘書です。



社長への問い

最後に、社長に問いかけをさせてください。


最後に「経営者目線で考えろ」と言ったのは、いつですか?

その言葉で、社員は変わりましたか?


もし変わらなかったとしても、それは社員の問題ではありません。

社員はまだ、社長と同じ景色を見たことがないだけなのです。



次回予告

日本の総理大臣の中には、官房長官を経て総理大臣になった人が何人もいます。


なぜ、官房長官は総理大臣になれるのでしょうか。

その理由は、官房長官という「立ち位置」にあります。


そしてそこには、中小企業の後継者不足を解くカギが隠されています。

後継者がいないのは、人材がいないからではありません。

実は、多くの会社に「ある役割の人」がいないからなのです。


第4回「後継者がいないのではない、『官房長官』を育ててこなかっただけだ」

第1部の締めくくりです。来週月曜日の更新を、ぜひお楽しみに。


つながるネット株式会社 代表取締役 森 修

中小企業の売上アップ・事業改善・後継者育成のご相談を承っています。

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